AfterGlow

アーティスティック・ディレクターメッセージ


ソースSource


ヨコハマトリエンナーレ2020
『ソースブック』について

横浜トリエンナーレ組織委員会

2001年の第1回展から数えて第7回展となるヨコハマトリエンナーレ2020「Afterglow ― 光の破片をつかまえる」はラクス・メディア・コレクティヴをアーティスティック・ディレクターに迎えて開催します。

インドを拠点に活躍するラクス・メディア・コレクティヴ(以下、ラクス)は、3名のアーティストから成るアーティスト集団です。ラクスのキュレーションは、「テーマ」ではなく、「ソース」から発想することを特徴としています。「ソース」とは時代や文化的背景の異なる実在の人物の生き方や考え方を例示する資料であり、会話のネタとなり、思考の素材となるものです。ラクスはこれを自分たちが思考の過程にある開幕前の段階からアーティストや関係者と共有することによって、周囲の人を巻き込みながら、展覧会の世界観を作り出していこうと試みます。

『ソースブック』には、その素材となる資料を5つ収めています。そのなかには横浜の寿町の日雇い労働者にして哲学者であった西川紀光にしかわきみつ、1912年に日本人の花嫁として来日したベンガル人女性ホリプロバ・モッリク、スヴェトラーナ・ボイムによる友情をあらわすことば、16世紀に南インドを治めていたビージャープル王国のスルタン、アリー・アーディル・シャーの知恵、2008年にノーベル化学賞を受賞した生物学者、下村脩しもむらおさむの研究の様子などがつづられています。そこから立ち現れる在野の人々、あるいは偉業を成した人々はそれぞれ、時代や文化的背景、生き方や社会とのかかわり方がまったく異なりますが、生活に根差した眼差しが示され、独自の光を放っている点では共通しています。

ラクスは、ここにある「ソース」に、独学すること、ケアすること、自ら世界を把握し、自ら光を放つことへのヒントを見出しています。そして、光が遠く異なる時間や場所へとつながるように「ソース」から思考を広げていきたいと考えています。

「テーマ」によって対象を絞り込むのではなく、「ソース」を起点に会話や対話が重なっていき、まるで「茂み」のように豊かな思想と思考の世界があらわれることをラクスは期待しています。

本書を手に、ラクスの思考の旅にお付き合いいただければ幸いです。