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エピソードEpisōdo


エピソード10

エピソード10

 

ヨコハマトリエンナーレ2020との旅は「オントシラ」とともに始まりました。「オントシラ」とは他言語に翻訳するのがきわめて難しいベンガル語の言葉で、生命の内側あるいはその間を流れるエネルギーのようなものを表しています。すべての広がりにおいて生命を形づくる流れです。この世界は、わたしたちの間を流れる「オントシラ」——人間に本来備わり、至るところに広がっているこの力から糧やインスピレーション、強さを得なければならないのではないか。個々の生命という小宇宙や、惑星のつながり、宇宙を超えてひろがる総体との関係を見直しながら、そんな風に考えました。

 

いま、「バブル」という言葉は、「トラベルバブル(近隣の域内旅行)」と言われるように、アフターコロナ時代を見据え、飛行機を乗り継いだり着陸したりして移動できる安全圏を指します。もはや孤立した閉鎖的な領域を示すものではありません。このように、言葉や世界は新しい相互関係のもと変化していきます。たとえば、研究者たちが「当たり前すぎて見過ごしていた」、身体の細胞間の体液で満たされた空洞を新しい器官として発見し、「間質」と名づけたのはたった3年前のことです。わたしたちは液状のものやスペクトルの連続体のなかにある存在に気づくべく、ゆっくりと漂流し始めているのです。

 

この最後から2番目となるエピソードでは、さまざまな意味で埋めることのできない作品とアーティストの間のギャップにそっと踏み込んでいきます。作品に固有の時間と鋭い感覚をもつアーティストとの間を流れるエネルギーとはどのようなものなのでしょうか?「間質」のように連続し、わたしたちのうちに作品をもたらす「ゾーン」はどこにあるのでしょうか?それを知るために12名のアーティストの姿を追ってみたいと思います。

 

そしてもうひとつ、追いかけたいものがあります。「討議的正義」たちが追い求める気配——、幾人ものプロタゴニスト(主人公)が集い、1年半以上の間続けてきた、果てしなく続く雨と日照りのような言説と正義についての議論をここで加速させます。

 

さらに、展覧会会場で上映している映像作品の一部を、オンラインでも期間限定でご覧いただきます。

 

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