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鶴田真由

鶴田真由 つるた・まゆ

神奈川県出身。女優。1988年、テレビドラマ「あぶない少年Ⅱ」でデビュー。
映画、テレビドラマ、舞台、CMなどの活動のほか、旅番組、ドキュメンタリー番組への出演も多い。近年はドラマ「マルモのおきて」、「酔いどれ小籐次」、映画「沈まぬ太陽」、「さよなら渓谷」、「ほとりの朔子」など話題作に出演。著書に古事記をたどった旅エッセイ『ニッポン西遊記 古事記編』(幻冬舎)がある。現在、TOKYO FM「フロンティアーズ~明日への挑戦」にナレーション出演中。

インタビュー

ヨコハマトリエンナーレ2014をご覧いただいた後にお話しを伺いました。

鶴田真由さんと言えば「アート好き」というイメージがありますが・・・

 実はそんな事なくて、「現代アートは分からない!」と、いつも言っているの(笑)。でも、アートはそれぞれの時代を映し出したもの、だとは思っています。 頭でモノを考え、何でも量産される「今」という時代に起因したアートを、何十年も後に観る人は、「あの時代ってこうだったんだな」と感じるのでしょうね。

鶴田さんは何か特別な「アートの鑑賞法」をお持ちですか?

 作品と対峙した時の感覚を楽しんでいます。ですから、瞬間的に反応できるジェームス・タレルの作品などはとても好きです。逆にコンセプチュアルな作品に対して、少し苦手意識があるのは、私は頭で考えるより、感覚で判断するタイプだからでしょう。こういう「直観的な鑑賞」をするのって、男性より女性が多いかもしれませんね。

Photo:TANAKA Yuichiro

「女優」という仕事とアートの関係について考えてみたことはありますか?

 アートと演劇の大きく違う点は、アートは「ことば」に支配されない、ということだと思います。演劇には台本という「ことば」があり、それを数時間かけて観客に伝えますが、アートは演劇と同等、もしくはもっと多くの要素をホンの一瞬で人に伝えることができます。そこにアートの凄さや可能性を感じます。

ヨコハマトリエンナーレ2014で鶴田さんの心に強く響いた作品はありましたか?

 新港ピア会場に展示されているの映像作品《ノー・ショー / No Show》(2004年)です。ガランとした部屋の中で、かつてそこにあった芸術作品を解説する声に導かれてメルヴィン・モティ、想像の目で作品を観る。これは人間に想像する力があるからこそ出来ることです。「想像力」とは、人間が開けてしまったパンドラの箱から、最後に出てきた「希望」のようなもの。これがあるから、私たちは生きていけるのだと思います。

この展覧会を通して、人間の「記憶」について何か感じたことはありましたか?

Photo:TANAKA Yuichiro

 例えば遺跡には、現在に至るまでの記憶の集積が封じ込められていて、その柱や石に触れながら目を閉じると、その歴史が映像となって再生されるような感覚に襲われます。この展覧会も同じで、それぞれの作品に込められた記憶を手繰りながら、その深みに触れたような気がしました。でも、記憶は時を経て少しずつ曖昧になっていくし、自分にとって都合良く変換されたりもする。そんな事も含めて、人間の記憶って面白いです。

マイケル・ランディ《アート・ビン》について

 この作品には、ふたつの意味を感じました。まず、芸術や文化が政治的抑圧によって廃棄されることは、延々と繰り返されている、という事実を意識したこと。もうひとつは、たとえ芸術が廃棄されたとしても、それって「所詮モノでしょ?」と感じたことです。芸術作品には作家の魂や記憶を込められるけれど、最後には「モノ」として姿を消し、記憶だけが残る。その記憶すらも「忘却の海」に流してしまえば、更に次の次元へと消え去ってしまう。それが分かっているのに、やはり「作品」という形のあるモノを得て、誰かと共感したい、確かめ合いたい、という欲求が人間にはあるのだと思います。だからこそ、人は芸術を求めるのでしょう。

最後に、ヨコハマトリエンナーレ2014アーティスティック・ディレクター森村泰昌氏にひとこと

 この展覧会そのものが、森村さんの大きな「作品」になったのではないでしょうか?森村さんの「忘却の海」に対する思いを、作品のひとつひとつから、そしてストーリー全体から受け取れたような気がしています。

2014年7月31日
ヨコハマトリエンナーレ2014 オープニング
新港ピア会場 カフェ・オブリビオンにて
聞き手/文責:横浜美術館広報渉外チーム 襟川文恵

pic_morimura

アーティスティック・ディレクター 森村泰昌よりお返事

鶴田真由 様

御来場ありがとうございました。楽しんでいただけたでしょうか。美術というのは、知的エンタメだと思っています。楽しむものなんだけど、サービス満点に、なにもかもお膳立てされているわけではない。観客のほうから、「これってなんなの?」とか、「なんでこうなってるの?」とか、ちょっと前のめりになって参加していただくところが、醍醐味じゃないかなって思っています。

鶴田さんは、そういう知的エンタメの楽しみかたをよく御存知なんだと感じました。芸術は確かにわからない。1+1=2というように答えがひとつではないし、それこそ世の中が忘れてしまっていることに眼差しを向けるジャンルですから、最初はわからないのがフツウですよね。じつは芸術監督をつとめさせていただいたこの私だって、最初はまったく「わからない」んですよ、出品作について。でもつきあっているうちに、だんだん自分なりにわかってくるところがある。すると俄然おもしろくなってくる。

これって、人間関係とまったく同じですよね。一目惚れのばあいもあれば、最初は謎の人物であったのに、長いあいだの交流のなかで、その魅力を知っていくときもある。芸術とは長くつきあっていきたいなと思います。ありがとうございました。

忘却の海からの5つの質問
あなたの世界の中心には、何がありますか?
ここに大きなゴミ箱があります。形のあるものも、形のないものも、何でも投げ込むことができます。
あなたには投げ込みたいものがありますか?ある場合、それは何ですか?
ある。
心と体の中にある汚物を投げ込みたい。
あなたの日常生活にアートはあった方がいいですか?それは、なぜですか?
あった方がいい。
それを創り出すことも、それに触れることも、生きる楽しみのひとつなので。
今、あなたが一番大切にしている本が燃やされようとしています。
あなたはどんな声または言葉を発しますか?
後は体験しろということか。
「横浜」のイメージを色に例えると、何色ですか?
レンガ色