ヨコトリレポート

2011.07

【第3回ヨコハマトリエンナーレ2011記者会見】

いよいよヨコハマトリエンナーレ2011開幕まで残り1ヶ月をきりました!
本日は遅ればせながら、5月26日に行われた第三回記者会見の内容をリポートさせていただきます。

当初は3月11日の15時から予定されていたこちらの会見ですが、同日14時46分に起きた東日本大震災により、午前の横浜会場は予定通り行えたものの、東京会場は急遽中止となりました。未曾有の災害を受けヨコハマトリエンナーレ2011の開催自体が危ぶまれるという時期もありましたが、「東北、そして日本のためにメッセージを送りたい」という参加アーティストたちの思いを受け、こうして無事に開催に向けての記者会見を行うことができ、スタッフ一同喜びもひとしおでした。

東京・青山のスパイラルホールで行われた会見には、横浜トリエンナーレ組織委員会会長である林文子・横浜市長、総合ディレクターの逢坂恵理子・横浜美術館館長、アーティスティック・ディレクターの三木あき子、そして参加アーティスト代表として横尾忠則氏、岩崎貴宏氏が登壇いたしました。



林組織委員会会長、逢坂総合ディレクターの挨拶を経て、三木アーティスティック・ディレクターによりトリエンナーレのタイトルである「OUR MAGIC HOUR—世界はどこまで知ることができるか?—のコンセプトが説明、展示の特徴が紹介されました。

「タイトルにもある“世界はどこまで知ることができるのか”という問いかけのもと、科学や理性では把握しがたい領域に注目し、より柔軟に世界をとらえようとする姿勢、異なる世界の見方や歴史観を示唆していきます。そしてそこには“視点を変えれば、魔法のように、世界は開けるかもしれない”という期待が込められています」



展示の特徴は大きく二つ。展覧会の各所に仕掛けられた意外な「遭遇・出会い」と、アーティストたちの震災への想いです。
意外な「遭遇・出会い」は、現代アーティストの作品と横浜美術館の所蔵品が、時代、ジャンル、文化背景を超え新たな視点のもと並列されることにより、これまでになかった解釈や創造を生み出し、自由な鑑賞の旅を促します。
またアーティストたちは、東日本大震災を受け、参加の意思を新たにする作家や展示プランを変更する作家が現れるなど、さまざまな形で「作家魂」を表明してくれました。
記者会見に出席した横尾忠則氏と岩崎貴宏氏からは、展示作品の制作に向けた思いを語ってくれました。
トリエンナーレの開催直前まで、展示する新作ペインティングの制作に取り組むという横尾忠則氏。1月から開始し、現在11点目を制作中。「人間が生まれる寸前、赤ん坊が見る最初の光景、そして人間が死ぬときに見る最後の光景、それをひとつにしたもの」
広島を拠点に活動する若手作家の岩崎貴宏氏は、会場である横浜美術館の空間を活かした作品を発表したいとコメント。震災発生から9日後に祖母とともに救出され、「将来は芸術界になりたい」と語った少年の話にふれ、「そういった状況にあっても、驚きや夢を与えられる作品をつくり続けて、いろんな人に感動を与えられるような作品を作りたいと思います」
さらにビデオメッセージで、クリスチャン・マークレー氏、ジュン・グエン=ハツシバ氏も登場。6月に開幕したヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞した作品「The Clock」をトリエンナーレで展示します。制作の拠点であるベトナム・ホーチンミンと横浜で、GPSを装着し走った軌跡が地図上に桜の花の形を描くプロジェクトを市民とともに実施。「桜の花は新しい始まりの象徴。日本の新たな幕開け、出発にしたい」これは東日本大震災の被災地へ向けた祈りとしての作品です。



記者会見後、会場を出るとヨコハマトリエンナーレをPRするために結成された“ヨコトリキャラバンズ”が登場!

「まことクラヴ」主宰・遠田誠氏率いるキャラバン隊によるパフォーマンスが、来場者たちのトリエンナーレへの期待をさらに高めてくれました。

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【「キッズ・アートガイド2011」のワークショップが始まりました!】

2011.07.06

教育プログラム「キッズ・アートガイド2011」。

このプログラムは、小中学生たちがトリエンナーレの参加作品をそれぞれの言葉で語りながら、展覧会をガイドするというもの。会場でみなさんも、ワークショップを重ねたキッズ・アートガイドに出会うことができます。

このプログラムはで、2005年、2008年展でも大人気だった「キッズ・キュレーターズ・プロジェクト」を前身に、2011年展では「キッズ・アートガイド」と名前を変えて、さらなる進化をめざします。

今回は多数の応募をいただいた中から抽選で選ばれた29人のキッズたちが集結。
6月12日に、第1回ワークショップを開催しました。



少々緊張した面持ちのキッズたちを前に、まずは、逢坂恵理子総合ディレクターがトリエンナーレの紹介や、いくつかの参加アーティストや作品についてもイメージを投影しながら紹介。「肩の力を抜いて、自分の好きな作品を探して、お客さんの前で自由に語ってもらえるとうれしいです」

次に、横浜美術館の内山淳子主任学芸員からプログラムの流れについての説明。

「作品についての知識を解説するのではなく、自分でみたこと、感じたことを、自分自身の感性や言葉で、お客さんに伝えてもらって、お客さんの感想や反応などと交わりあいながら作品の意味合いを頭と体で感じていきましょう」

「キッズ・アートガイド2011」では、美術鑑賞教育の専門家である、京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターの伊達隆洋先生と渡川智子先生や、2005年、2008年展のキッズ・キュレーターズ・プロジェクトをご担当いただいた、横浜山手中華学校美術科教諭の王節子先生もプログラム運営に参加。



さらに、キッズたちの手助けをしてくれるサポーターのみなさん。経験豊かな社会人や大学生、それから高校生は2005年、2008年のトリエンナーレでキッズ・キュレーターズ・プロジェクトを経験した先輩たちが集まってくださいました。



さっそく伊達先生たちによるワークショップが始まります。
まずは「ワークショップ」の説明から。
「学校での勉強と違って、いろいろなことを試していきながら自分たちで考えて、何かを見つけていく、ゲームのようなもの。正解があるわけではなくて、みんなにとってためになり、面白いと思うことを発見していく作業です。なので、間違えることを怖がることや、心配しなくても大丈夫です」

この日挑戦したワークショップは「モネパズル」。
実際にある絵画作品を元にした大きなパズルに29人全員で挑戦します。



「美術館に行くことや、作品や絵をみることが好きな人はいますか?」という質問に対して半数くらいが挙手。「美術館に行ったことがある人は?」は、3分の2くらい挙手。なかなかたくさんのキッズがすでに美術館体験をしているようです。

「ひとつの作品をどれくらいの時間をかけてみますか?」という先生の質問に、目が合ったキッズはちょっと恥ずかしながらも「3分くらい」、「2分から5分くらい」というコメント。

「みんな結構じっくりみていますね。実はひとつの作品を見る時間の研究の調査結果がありますが、それによるとひとり平均で10秒前後しか時間をかけていないそうです。これって、すごくもったいないことだと思いませんか?作品をじっくり見れば、たくさん発見することもあるはずだから、お客さんにもいっぱいみてもらいたいと思います。そのためにも、みんなにもよく作品を見てみるということを、パズルを使ってやってみたいと思います」と伊達先生。

いよいよ「モネパズル」ワークショップの始まりです!
実際の作品の1/2サイズのイメージと、パズルのピースを見比べながら・・



床に一枚ずつ組み合わせて並べてみます。
どうかな?あっているかな?
みんなでじっくりみながら、あともう少し。



完成!みんなで拍手です。



今まで100回くらいやってきた中で、
一番速い時間(10分弱)で完成することができたそう!



ワークショップで大切なのは、体験後の意見交換です。

―「モネパズル」をやってみて、みんなどう思った?
キッズ:「初めてだったけれど、いろんな色があるんだなあ、と気づいて面白かった!」
―どんなことに気が付いた?何が描かれているんだろう?
キッズ:「睡蓮の花・・!池に咲いている花」
―他には?
キッズ:「全体的にぼやーっと描かれていてよくわからない・・」「同じような色しか使っていないから、不思議・・」
―そう、よくわからないのも重要な発見ですね。
キッズ:「ちょっと暗い・・」
キッズたちは、とても大事な点に気づいているようです。

「作品の中には“モノ”だけではなくて、“コト”が描かれていることもあると思います。自分の目に映っているぼんやりしたものも描かれているかもしれません。そして“よくわからないコト”も含まれているかもしれません。だから、これから作品をたくさん見ていくなかで、“よくわからない”と思ったことも、とても作品を理解するうえで大事なことだと思います。“わからない”と思ったことを頭が悪いということではなくて、“わからない”ことを大事にしながら、よくよく作品を見て、感じていきましょう。そして、話をして、言葉にだしていきましょう」と伊達先生。

最後に、キッズたちは自分の言葉で素直に感想を書いて、初回のワークショップは終了。

「キッズ・アートガイド2011」は会期中に実施するアートガイド本番の前に、キッズたちの感性やコミュニケーション力をひろげるような趣向の異なる4回のワークショップを行ないます。

次回は、どんなワークショップになるでしょうか?その報告はまた・・お楽しみに!

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