Yokohama Triennale 2001







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南条史生



Q:横浜トリエンナーレはどんな展覧会になるのでしょう?

A:見た人の身体の中に、ある種の特殊な体験が残るような展覧会にしたい。アートの与える視覚的、身体的、知的な体験は、普通のエンタテイメントとも、テレビとも、文学とも、スポーツとも違うのであって、その刺激を受けて、それが体の中に残って、もっとこういうものを見てみたいと思ってほしい。今まで知っていた世界観や常識とは違う、まだ知らないことがたくさんあったのだ、こんなに別のものの見方があるならもっと見てみたい、と思ってほしい。そんな展覧会にできないかと思っています。


Q:どんな作家を選ばれるのですか?

A:単純に今までやってきたことを繰り返すのでなく、日本、横浜ということを考えて、広い意味で文化、土地、歴史などを勘案した上で、何か新しい作品を提案してくれる人が一番ふさわしいと思って探しています。いつもチャレンジしている人、新しい視野を自分の作品に取り込もうとしている人ですね。コラボレーションというキーワードを掲げていますが、必ずしも人と人とのコラボレーションだけでなく、ほかのフィールドの成果を援用できるような幅の広い作家が重要なのではないか、そのことによって見ている人の現実の生活とアートに橋をかけ、より身近な印象を与えることができるのではないかと思います。


Q:世界中で国際展が開かれている状況で今、横浜でトリエンナーレを立ち上げるにあたり、ポイントとなる点は何だと思いますか?

A:2つの違うハードルを越える必要が出てきます。日本で初めて国際展を開催することによって、今まであまり現代美術を見たことのない日本の一般の人に、こういう世界もあるのだと言うことを伝える使命があるでしょう。そしてそれがおもしろいものだと思ってもらいたい。もうひとつは現代の美術をさんざん見てきた外国から来る観客に対し、ここではすこし違うものが見られるでしょう、これが我々の見方ですよ、これも意味があるんですよというメッセージが出したい。その結果、次の時も見に来ようと思わせること。この対極にある目標をうまく両立して超えていくことがADに課せられた使命だと思っています。


Q:開催地としての横浜の印象や魅力は?

A:日本では横浜は、一般的に港があって外に開かれていて、国際的で都会的な人が住んでいると、そういうイメージがあると思います。もうひとつの大きな事実は、日本第二の人口を抱えていること、だから多くの人がこのイベントにアクセスできるし、東京の人にも身近だという感じがありますね。それに洋館や中華街のイメージも強いと思います。


Q:横浜トリエンナーレが世界や日本のアート界に与える影響、また開催地である横浜にもたらす効果はなんでしょう?

A:グローバルな文化に貢献すること。単純に国際的なものを日本でも見せていますという貢献ではなくて、日本的、あるいはアジア的視点で現代の美術を提示するという貢献ができると思います。それは世界の文化の発展に参加するということです。その役割を日本を代表して横浜が担うことができれば、それはやはり市民文化の発展に大きな成果をもたらすのではないでしょうか。
それから、よく行政が市民文化を育成すると言いますが、市民文化には実は二つあると思うのです。市民のお稽古事はその一つだが、それと同時に、その都市でいかに良質の文化と接する事ができるかということがもう一つです。最高の展覧会やイベントがそこで開催されて、市民がそれに接することができる、そこでその都市の文化が盛んになる。その両方があって初めてお互いの意味が出てくる。良いものを見て、刺激を受けて、若者が興味を持ったり、鑑賞する能力を持った観客が育つ、そういうメリットが開催地には生じてくる。これからはゼネコン行政ではなく、環境問題であったり、文化であったり、そういうソフトな産業が重要だという視点はとても重要だと思います。さらにまた経済効果もあるはずです。ヨーロッパの事を持ち出したくないが、すでに文化は産業なんですよ。将来的に、こうしたイベントが単にホテルやレストランの収入増をもたらすだけでなく、派生的な産業として育っていくという目で見るべきだと思う。たとえば今横浜に一つもない美術系の大学をつくるきっかけになるかもしれないし、あるいはマルチメディアの産業が発展するかもしれない。デザイン、建築、都市計画、ファッション、などさまざまな産業が興るきっかけになるかもしれない。そういう観点から、行政がひとつの経済振興の素材としてどれだけ利用できるかということも考えるべきだと思います。


Q:観客となる人たちへのメッセージは?

A:難しいものではなく、おもしろいものを見に行くと思ってほしい。美術というのは一種の頭の体操だと思うんですよ。2002年にはサッカーのワールドカップが横浜に来るけれど、スポーツというのは人間が与えられた身体の能力を使うことで喜びを感じている。それと同じで、表現行為、理解力、美しいものを感じること、そういった脳の能力を最大限使うことで、人は別の喜びを感じるはずです。昨日よりも今日は、その能力がもう少し広がって、より多くのことが理解できるようになる、ということは生きている喜びともいえます。そういう体験をポジティブに捉え、自分の生き方に活かしていける人たちが日本の社会にも増えてほしいものです。21世紀の始まりに、こうした内外の第一線にいるアーティストたちの美術というものが、われわれの社会に対する積極的なコメント、あるいは発言・貢献として、一石を投じることができたらいいですね。