写真家であるオルデンドルフは、自作を展示する場所の歴史と自己の記憶とが共鳴・干渉し、日常/非日常が複雑に絡み合うインスタレーションを制作してきたが、1990年代半ばから開始した映画の連作《マルコ》シリーズによって、さらに独創的な展開を見せている。写真理論や写真の語法・文法を基に制作される映画は、フィチャー・フィルムのスタイルながら、極めて写真的に時間と構図が断片化・分節化されたもので、「動く写真イメージ」のコラージュと言える。10カ国語を駆使する俳優ポールを主人公に起用したシリーズ《マルコ》では、主人公は世界各地の都市と文化、様々な言語の間を分裂症的に移行する。横浜のための新作でも、場面はスペインのビルバオ、京都、バルセロナへと変わり、私たちの本能的な「物語的なもの」や「言語化（意味付け）」への欲望を錯乱させていく。